氷河期初期世代おばはんの日々うらうら

就職氷河期初期世代のおばさんが時事問題に思ったりすることや、日々のあれこれ

親や親族の介護のリアル

親の介護。
この壁にぶち当たっている人は、数限りなくいると思う。
私自身は親ではないが、親族ではあり、他に介護する人がいなかった、という人を2人、介護して最期まで見送った経験がある。
30代の時に一人。40代の時に一人。

まず、働きながら介護をする、という事でこの2回でどうなったか。

30代の時の介護では、当時は離婚前で主婦だったのでパートを辞めて、介護と家事、という事になった。結果的には、介護で毎日外出する(しかも片道2時間、往復で4時間だったため、恐ろしく忙しかった)ことになり、帰りが遅くなることもあったためか、元亭主はその間に不倫に走り、その後にもいくつか「事件」があったために、結果として私は離婚した。
(但し、介護が原因で離婚した、とは私は思っていない。そもそも妻が親族の介護に駆け回っている時に不倫に走るような夫は、もし結婚を継続していても、妊娠中、育児中、また夫両親、妻両親の介護、その時々でどこかで不倫にまた走っただろう。そんな不安定かつ、精神的に追い詰められた状態が40代、50代で起きる可能性があったことを考えると、キャリアにまだギリギリ復帰できた
30代前半での離婚だったことは私自身にはラッキーだったと思っている。)
ただ、「介護のためにパートを離職」し、「介護で妻が不在がちになったことをいいことに、夫が不倫した」というのは事実だ。

そして40代の時の介護。 当時は独身に戻っており、フルタイムの正社員として勤務していたが、会社の制度上、「両親or子供」の介護や治療介助以外は全く認められなかったため、全て有給休暇で行うことになった。 朝、8時に出社し(本当は9時始業)、9時半頃に病院から電話が入ってしまうと、そこで仕事はストップ。一日有休を取らざるを得ない。しかしグループで仕事をしていたわけではなかったので、18時頃に他の家族とバトンタッチしてから帰宅し、家からリモートで仕事をする。 睡眠時間は実質4時間くらいだったと思う。 体力勝負である。 上司には何故私が介護しなければいけないかの説明はしていたが、結果的に、介護していた当人が亡くなってから、私は全く関係ない部署に飛ばされることになった。 スキルアップが出来るわけでもなく、キャリアパスがつながる異動でもなかった。それを2回繰り返され、私は結果的に精神的に参ってしまい、2回休職を繰り返した挙句、退職した。
スキルアップの道筋も関係ない、所謂嫌がらせ異動だったと、今でも思う。 私の場合は、まだ通える距離だったので「介護のため」に離職したのは最初のパートの時だが、これが地方の地元に帰って、などになると、どんなに有休を使おうと、企業自体に介護休暇、というような長期で職場を離れる制度がないことには成り立たない。 そこで、介護をするために「離職」せざるを得なくなるのだと思う。 子供にとって、「親の介護」や「親族の介護」が分厚い壁になるのは、私個人のこの2ケースだけでも理解できると思うが、自分の体験、また友人の体験などからちょっと書いてみたいと思う。。 介護のつらさ、大変さは、 1.介護期間の終わりが見えない。(末期癌等でない限り、いつまで介護しなければいけないかが不明。まだ、育児の方が例えば1年で保育園、とか、3歳までは自宅で、とか、目安があるが、介護は1年かもしれないし5年かもしれないし、10年かもしれない・・・) 2.実子が親を介護、というのは企業でもだいぶ介護休暇等、整備がされてきているが、実際のところは介護対象者は実の親だけではない。 祖父母かもしれないし、我が子かもしれない。叔父・叔母等かもしれないし、養親かもしれない。しかし、そこまでを考えている企業はかなり少ないと思う。
そうすると、「介護休暇」的なものが使えるかどうかは企業ごとに変わってくる。私のように有休で対応しなければいけない場合、かなり負担になる。
3.介護される側が、家族に介護されることを望んでいる。(特に、介護したことのない人ほど、家族に介護されたいと言っている気がする) 自分自身が介護したことがない人は、それがどれくらいキツイことか分かっていないからではないだろうか、と個人的には感じている。 少なくとも、私の周りで「家族に介護されたい」と言っている年配の方々は、自分は誰かの介護をしたことがない。 誰かの介護をしたことがある人は、「病院でチューブにつながれて生きながらえるのは嫌。延命措置はいらない。病院ではなく、要介護、の状態になったらさっさとホームなり病院なりに入れてほしい」と言っている人がほとんどだ。 一部は、自分で先に「このあたりのホームがいいかも」と、介護度数によって3パターンほど見繕っていたりもする。そして、そのための費用を使ってしまわないように、こっちの銀行に入れてあるのはホーム用、とハッキリ言っている人もいる。
4.世代間の費用の問題。 「介護され世代」と言っていいのなら、今の時点で現実的に介護されていたり、介護が目の前に来ているのは団塊の世代だろう。 そうすると、介護する側に回る世代で多いのが団塊ジュニア、そう、ロスジェネ世代になる。 親世代が自分たちの介護費用を残していない場合、ロスジェネ世代は介護に使える資金がない。(自分一人が食べていくのがやっと、もしくは自分の家族を養うのがやっと。) 資金がないと、ホームに入れたり、お金を払っての介護が出来なくなる。となると、自宅で自分の手で介護するしかない。 自分が非正規等で働いている場合、逆に時間の調整などは出来るかもしれないが、金銭的に問題があるので、苦しい介護になる。(オムツが買えない、食べ物が買えない、など)
5.介護のまま長生きしてしまう。 いいことなのか悪いことなのか、介護状態に入ってからも「長生き」出来る医療体制。 医療が進み、人が長生きになる。これ自体はいいことなのかもしれないが、「介護状態」のまま長生きとなると、介護している側の心中は複雑である。介護されている側も複雑かもしれない。 かといって、昨今の病院はそうそう長くは入院させていてくれないので、病気になっても、ある程度治ったら戻ってきてしまう。 そのループを繰り返すことは・・・実際、介護している間、例えばオムツを嫌がり、病室で使える簡易トイレを嫌がり、何としてもトイレに行きたがり、しかしそこまでたどり着けず途中で・・・の介助を何度も経験した私自身、胸の内で「まだ続くのか」と思ってしまったのは正直な気持ちである。 また、家に戻ってきてからも薬がない、ここが痛いあそこが痛い、布団が冷たい、もしくは暑い、家事は出来ないけどご飯は食べたい。 トイレには行けないけど、人一倍食べる・・・・ ある意味、地獄だった、としか言えない。 (赤ちゃんのオムツを自分の手で変えたことはないが、友達の赤ちゃんのオムツ交換を見たことはある。赤ちゃんの大の匂いと、成人の大の匂い、嫌悪感は段違いだった) 6.介護と嫁、という大きな問題。 現在のようにホームや施設、ケアハウスのようなものが出来る前は、おそらくは家族(特に長男の嫁)がメインで介護を行っていたのではないだろうか。 しかし、民法が改正され、「長子相続」というものがなくなり、遺言書もかなりメジャーになってきた今。 これまでの「長男の嫁が介護する」は、「いや、介護は実子で。私は自分の両親を見る。アナタも自分の両親を見て」と変わっていった。 子供自体の数も減り、一人っ子同士の結婚も増え、それ以上に「共稼ぎ」がメジャーになった現状を考えると、なんの根拠もなく、「俺、長男だから俺の両親の介護は頼む」なーんて言った日には、奥さんの方は着々と離婚の準備を進めていく時代。 「家事、育児、介護は嫁の義務だろ!?」 と雄叫びを上げる男性もまだいそうだが、 夫=仕事 妻=仕事、家事、育児、介護 はあまりにも不平等だ。しかも、特別寄与請求が出来るようになっても、妻に入るべき遺産を夫側が「共有財産だから~」と持って行くことも大いに考えられる。(なぜなら、実の親の介護を妻に押し付けても、何がおかしいの??と考える思考回路なのだから、妻の金は俺のもの、というロジックを発動させる可能性は高い気がする。) だからこそ、「介護を嫁に丸投げ」=「離婚」というロジックを妻側が発動させることになるのだろう。 (私自身、元姑から実際に「介護はお願いねぇ」とすり寄られた経験がある) この部分は、育児と共に、今まさに新しい「当たり前」を作成中なのだと思うのだが、私はその前に気になることがある。 育児は自分の子だ。家事は、してないと自分も不利益がある。 しかし、介護は???? それまで嫁いびりをしてきた舅、姑を目の前にして、ニコニコとかいがいしくお世話出来るだろうか?「早く逝かないかなぁ」と思いながら、介護する人って多いんじゃないだろうか。 男性陣は、その怖さが分かってるのだろうか?
(つまりは、自分の妻が、自分の親が早く死なないかなぁと願っている状態になる) もしくは、ある程度まで自分で動けるところまでは妻が介護し、さぁてオムツだ、となった途端に「じゃ、離婚ね」となった時、夫はどうするのだろうか。 目の前には、垂れ流しで言葉もフガフガ、可愛くもなく、しかも大きくて重い大人。 自分の子のオムツすら逃げた夫が、自分の親だからと言って成人男性・女性のオムツが替えられるだろうか? もし、妻が介護を一時的にはOKしたとしても、妻はいつ、特大必殺レベルのブーメランを投げるか、チャンスを伺っているだけかもしれない。 こうして、パッと思いつくことを書いてみるだけでも、「ああ、いろんなギャップの狭間にいるんだな」という事を感じる。 ・ジェンダーギャップ(自分の親でも、夫の親でも何故か介護は女性、と思っている人が多いのでは、という感覚) ・女性が管理職になりたがらない(なれない)というギャップ(育児も介護も、ワンオペ+仕事は厳しい)。 ・ケアギャップ(女性が舅・姑のオムツを交換すること(下の世話をすること)は「当たり前」とみられるのに、男性が「舅・姑の下の世話をすること」は忌避される。女性からすると、まだ姑は何とかなっても、舅は気持ち悪いだけだ。実の息子におまたを見られるのは嫌だろうが、そこは実子がすべきだと私は思う。介護は綺麗事じゃない。) ・世代間ギャップ(親世代の当たり前と、子世代の当たり前は違う) 育児は自分の子である場合が多いが、せめて夫の親の介護に関しては、妻に対価を支払うべきではないか? 自分で介護が出来ない → 妻に頼もう! の前に、何故プロに依頼することを考えないのか。 社会保険の不均衡からしても、「実子のいない人の介護」という問題がそこここで発生しているのは当たり前なのに、何故公的に休職したりすることが出来ないのか?(育休のように、年単位で) 下の世話=女性の仕事、みたいに考えてしまってる人、多くないか? 施設には入りたくない!と言い張る高齢者の方々、自分の下の世話を「実の息子」がやるとしたら、施設と自宅とどっちを選びますか? (そして息子は頑張っていた仕事を辞めざるを得ないだろうな、という至極当然な未来付きで) 既に2人、介護から看取りまでをした私だが、両親の介護がどうなるかはまだ分からない。 その頃、自分が何歳で、果たして仕事と同時進行出来るかどうかも分からない。 しかし、こうして上記のようなことを考えていると、両親に「葬式代だけじゃなくて、介護費用も残しておいてよ」とちゃんと話しておかないといけないな、としみじみ思うのである。