氷河期初期世代おばはんの日々うらうら

就職氷河期初期世代のおばさんが時事問題に思ったりすることや、日々のあれこれ

R.I.P. エリザベス女王

エリザベス2世崩御

勿論ご年齢は知っていたが、自分が生まれた時からずっと英連邦首長はエリザベス女王だったので、私も少なからずショックを受け、また寂しさを味わっている。

 

チャールズの長年の不貞、ダイアナ元妃の事故死等に関しては、モヤっとするところもあったが、それ以外では鮮やかな色の服を着て、ちょっとイタズラっ子のようなジョークを飛ばし、コーギーを可愛がり、ミーハーなところもある、素敵に年齢を重ねている

女性、という感じだった。

日本の皇族とも近しい関係を作って下さったおかげで、皇族の方々が留学するようになってからは行先は英国だった。

昭和天皇上皇様、天皇陛下とのお写真も多く、今上天皇が留学された際だろうか、何やら本を前にお二人でお話になっているところは、エリザベス女王もワンピース姿だったせいか、上流階級の普段のショット、という気がしたものだ。

(最近、YouTubeでその動画を見つけたので久しぶりに見たが、音声はなくても、何となく天皇陛下(当時は皇太子)が興味を持たれている分野のもので希少なものを見せて下さっていたのかな、という感じだった。静かで穏やかな時間。)



エリザベス女王の治政は長い。

なんといっても在位70年だ。ギネス記録で現在2位、1位はフランス、ルイ14世である。(太陽王ルイだぞ!フランス革命の前だぞ!)

 

その間、女王に仕えた首相の最初は、なんとチャーチルだ。歴史の本に載っている、第二次世界大戦時、またその戦後処理の時の首相だ。

「世界史」として、中学や高校で学ぶ人物が、最初に女王に仕えた首相だというのは、結構すごいことだと思う。

それから、最終的に15人の首相が女王に仕えた。(その中で女性は3人)

70年、と一言でいうのは簡単だが、それは激動の時期を何度も挟んだ70年間だ。

 

ちなみに、007、ジェームス・ボンドの作品の中には「女王陛下の007」という作品がある。

今までにボンドを演じ、「女王陛下の007」だったのは6人。

ショーン・コネリーから始まってダニエル・クレイグまで。ロンドン五輪の演出として、007のダニエル・クレイグと一緒に女王がパラシュートで会場に降りて来る、という演出は最高だった。(もちろんパラシュート落下はスタントだけど)

演出監督は「そっくりさん」を使う予定だったらしいが、エリザベス女王自身が一言セリフを加えることを条件に自分自身で出演されたというのもトリビアだ。

なので、エリザベス女王「史上最も記憶に残るボンドガール」として、英国映画テレビ芸術アカデミーから表彰されている。

こういう、女王陛下に対して「ボンドガール」と言ってしまうのも、イギリスらしいなぁ、と思ってしまう。



エリザベス女王の長い治政の中では、なかなかつらく、厳しい時期もあった。

戦争、紛争、スキャンダル。

その中で、海外ではかなり報じられていたが、日本での報道はあまりなかったのではないか、というものがある。

それは、「王室費のダウンサイジング」だ。



イギリス王室も、古く過去に遡ることが出来る特別な血統だと言えるだろうが、そのために保持していた「特権」の中に様々な国費の使用、及び免税事項があったのだ。

元々、国民は「王室は金を使いすぎ」と言ってきたようだが、その炎が一気に燃えさかるキッカケになったのがバッキンガム宮殿で起きた火災である。

(これは私も記憶している。)



全焼はしなかったが、かなりの被害を受けた。

そしてそのバッキンガム宮殿の修復工事の見積額が、1992年当時で約4000万ポンドと試算されたのだ。

 

それに対し、様々な税金が免除されていることに加え、国費で「優雅な生活」を送っている王室に対して、国民から激しいバッシングが起こったのである。

国民が何故「見ることも、入ることも出来ない」宮殿の修復のために4000万ポンドも税金を使われるのか、女王は所得税すら払っていないのに、という、ある意味至極当然な「炎上」となったのである。

(今、日本でもネット上で見かける論調だな・・・)



チャールズとダイアナの関係で王室への国民感情が悪くなっていっている、まさにその時期に起こった出来事だったせいもあるのだろう。

エリザベス女王は、ここで一気に舵を切ったのだ。

 

・バッキンガム宮殿の一般公開(常時ではないが、期間を決めて今でも毎年行われている。残念ながら、私はまだ外からしか見ていないが

・王室費減額のため、公費として受け取っていた経費を削減(旅行費、警備費、各城の維持費用等)

・王室専用列車の廃止

・王室専用ヨットの売却

・王室専用ジェット機の廃止(国家専用機がないってことだよね。その代わり、イギリスは「英連邦」なので、かなりの国に行く時には、首長としてブリティッシュ・エアウェイズか、相手国のエアラインのファーストクラスを使うことでほぼ問題はないらしい)

・王室に仕えている使用人の特権廃止

・「王室」として公費を受け取れるメンバーの削減

 

等など。

それに伴い、王室予算の詳細も国民に公表したのだ。

当時、エリザベス女王は既に60歳。

それまで、「当たり前の恩恵」として受けてきて、使ってきたものがどれだけ国民の生活から乖離しているのか、また、その乖離こそが、今後王室が残れるかどうかの鍵だという事を悟り、60歳という年齢で行動出来たことはすごいと思う。



それだけの透明性を持っていたこと、市民の生活に目を向けていたこと、ちょうどIT革命なども始まっていたこともあり、スーパーマーケットが新しいレジシステムを開発した、などに女王が出向いて、ご自身でお買い物をする姿をテレビで流したり、という事も「王室は国民と違う」という概念を覆すことになったのだろう。

(勿論、そういった現場にはセキュリティガードや侍従が付き添っているが、ちょっと調べただけでも、スーパーの店長さんに「ここに通すの?」などと聞いてご自身でピッとレジを通してみたり(1時代前のセルフレジ)、チーズ専門店などで「あなたのおススメはどれ?」と若い店員さんに聞いたりする姿は、コケティッシュでかわいらしい。

「公務です!!」のような仰々しいスーツではなく、ちょっとラフさを出した服装で、「これはズルできないわね」等と仰り、あの独特に「ニヤリ+ニッコリ」スマイルで冗談を仰られたり。

 

そしてロンドン五輪の時のパフォーマンス、コーギーの散歩をしている姿(どこで見た報道か忘れたが、コーギー好き集まれ!のようなオフ会に女王がコーギーと共に顔を出したこともあったハズ)、プラチナ・ジュビリーの時のクマのパディントンとの共演。

 

パディントンとのコントのようなやり取りも好きだったが、私はその後にQueenの「We will rock you」が始まった時に、ティーカップとソーサーをスプーンでティンティントン、ティンティントン、とうまく音程を取って曲を奏でている姿が好きだった。

 

こうして、王室費の公表と、大胆な削減、国民の中に姿を見せる、という姿勢が国民の王室に対する感情を反転させたのだろう。

その後も不祥事などは発生したし、まだくすぶっているものもあるが、「エリザベス女王」に対する感情は今の報道を見ていると「敬愛」である、という事が分かる。(王党派に限ったことではあるのかもしれないが)

 

 

女王亡き後、チャールズ王がどれだけ頑張ってくれるか、ちゃんと国民の信頼を得ることが出来るか、それはまだ分からない。

でも今は、エリザベス女王の思い出にちょっと浸っていたいと思う。

何しろ、私が生まれた時から、「イギリス連邦」の女王はただ一人、エリザベス女王だったのだから。

 

天国で、夫君と再会し、安らかにお眠り下さい。

70年の長きにわたって、眠れない日々を多く過ごされたことでしょう。

肩の重荷を下ろし、今度こそ夫君とスウィートな時間を過ごされますよう、お祈りします。

 

R.I.P