氷河期初期世代おばはんの日々うらうら

就職氷河期初期世代のおばさんが時事問題に思ったりすることや、日々のあれこれ

「SPARE」は、吉と出るか凶と出るか・・・

ハリー(ヘンリー)王子の自伝、「SPARE」が発売開始され、変な熱い騒動と、冷たい騒動が起こっている。
スペインで一足早く発売されてしまって、内容がすっぱ抜かれたのもあって、何だか出だしからスタートダッシュでコケたような印象を持ってしまうが。


個人的には、私はダイアナ元妃のファンだったので、チャールズ王の不倫はやっぱりモヤモヤしてしまっていたし(だからカミラ妃は好きにはなれないんだよな)、ダイアナ元妃の事故の報道も、葬儀も、ハッキリ覚えている。
パリ市内を知り合いの車でドライブした時には、「ここがダイアナが亡くなったところだよ」と突然言われて、思わず言葉を失ってしまった。
だからこそ、葬儀の時に、ウィリアム王子とハリー王子が、泣かないように頑張ったのか、顔をこわばらせて、それでもしっかりと歩いていく姿にはもらい泣きしたものだ。

そのハリー王子が、こんなことになるとは思っていなかった。

 


本当に私の個人的な感想だが、別に、ハリー王子がメーガン妃と結婚したこと自体が問題だとは思っていない。
確かに、メーガン妃はいわゆる「イギリス王室」のマジョリティの人種とは違うし、出自も違えば、伯爵家から嫁いだ、というような事でもない。
そもそもがアメリカ人で、女優で、「今時の女性」として普通にセレブに憧れを持っていて・・・。
なので、メーガン妃がカーテシー(西洋式の女性特有のお辞儀)を「中世の映画みたい!」と茶化してしまったりしても、まぁあり得るな、と思う。


私は、子供の頃にピアノをやっていたので、何故かそこの教室では、発表会で演奏した後に女児はペコンとカーテシーをする風習があった。
勿論、子供のするカーテシーなので正式なものではないし、転んでも困るので(大体、みんな発表会だけはエナメルの靴を履いていたから)、ちょっと片足を後ろにさげ、上体は倒さずにチョコンというか、ペコンという感じのカーテシーだ。
今となっては真偽は分からないが、「子供がすると可愛い」(特に発表会なので、大体がワンピースなり、ちょっとドレスめいたものを着ていたから余計に)、というだけだったんじゃないかな?
まぁ、女の子の「お姫様ごっこ」の延長だったのかな。


なので、本当に「お姫様」になったメーガン妃が、「これでしょ??」とカーテシーを茶化したりしたことは、別に深刻な問題ではなかったと思う。
メーガン妃が、「リアルな王族」と、「ハリウッドが作った王族」の違いを理解してさえいたら、だ。どうも、この部分の理解が追い付いていなかったのが、ハリー王子とメーガン妃の転落の始まりだった気がする。

 


ハリー王子とメーガン妃の「離脱」に関して、ハリー王子の今回の「SPARE」は、話半分で読まなくてはいけないと思うが、いずれ読んでみたいと思っている。
ただ、既に読んだ、という記者の意見などはおおむね、ハリー王子の「お涙頂戴」物語だった、という感想が多い。
そのあたりは出版前の下馬評通りというところだろうか。


今までの様々なインタビュー等でも、ハリー王子にしろ、メーガン妃にしろ、「王室に対して前向きに、国民を統べる者の一員として」の意見がなかったからだ。
こんなことをされた、あんなことをされた、私は傷ついた。
そしてそれに対する、多額の出演料等。

これを見させられるイギリス国民としては、「でも、食べることにも、住むことにも、暖房にも、旅行することにも、生活は何も苦しくないんでしょ?ならいいじゃない」と一刀両断したい気分になるのではないだろうか。

傷ついている、苦しんでいるのは国民だ、と。

 


また、こう言ってしまっては可哀想かもしれないが、次男が「SPARE」であることは、それはイギリスに限った話ではないし、王族に限った話でもない。
「王族」という、国民の税金(イギリスの場合は、それぞれ不動産収入などはあるが)で生きるのだから、国民を鼓舞し、規範となり、愛され、親しまれ、そして敬愛、尊敬されるべき立場に立っているにも関わらず、「私たちは苦しんでいるのです」と言ってしまったら、実際食べるものに困り、電気代高騰によって「食物か、暖房か」の二者択一を迫られている国民からすると、「はぁ?」となってしまうのはある意味当然だ。
イギリスは男女双方が君主になれるので、ハリー王子が「次男」=「男」だったから余計に、という事でもない。
君主制で、王位継承権第二位の者が「SPARE」であるのは、いつもの事なのだ。

 


日本の皇室だって、上皇様の時には、今上天皇陛下が皇位継承者第一位であり、秋篠宮殿下が第二位(=SPARE)だった。
そして、日本は男系男子継承となっているので、現在は秋篠宮殿下が第一位、悠仁様が第二位(=SPARE)だ。

 


「SPARE」が悪魔の呪文になってしまったのは、ハリー王子の受け止め方だったのではないだろうか、と思われても仕方がない。
例え王族でなくとも、「継ぐ」もの(動産、不動産関わらず)を持った家に生まれてしまった以上、次世代へ、の流れを保持しようとする動きはあるだろう。
伝統芸能でも、屋号でも、例え「〇〇商店」のような、看板だけであったとしても。

 

しかし私は、メーガン妃によってハリー王子が毒されてしまって、現状のようになった、とはあまり考えていない。
メーガン妃の発言や、周囲の言葉からは、しごく「普通の」玉の輿に乗った女性、という印象を持っているからだ。
あまりにも無邪気に、「あたし、お姫様になったの!!!」を繰り返しているような。
バッキンガム宮殿に住みたい、バルモラル城に住みたい、と言ってしまったり、コテージの改修を過剰に豪華にしてしまったり、写真を撮る時にはブランド物を持っていたり(見えるようにね)、プライベートジェットで「あたし、特別なの」とやってしまったり。


ただ、このハリー王子とメーガン妃の「王室離脱」が、「王冠を賭けた恋」のエドワード8世とウォリス・シンプソンの人生と異なってしまったのは、時代の進歩による「発言力」やSNS、テレビ、ドラマなどのドキュメンタリー風の暴露などの存在だろう。
エドワード殿下も回顧録を出版したり、また、イギリス領であった他国の総督になったりもしているが、第二次世界大戦前、既に退位しているエドワード殿下の動向を一般市民が知ることはあまりなかったであろうし、逆に他国から政治利用されそうになっても、イギリスは知らんふりを決め込むことも可能だった。


ハリー王子とメーガン妃は、もしかしたらエドワード殿下と同じように考えていたのかもしれないが、残念なことに時代が違う。
イギリス領のどこかの総督として、プライドを満足させながら、社交界の中心として過ごす、というのは無理なのだ。
そこで彼らが選んだ道が、「人生の切り売り」という暴露だったのだろう。(ハリー王子にとっては、人生=王室、だものね)
パトロンを探しながら、インタビュー、出版、Netflixドラマと、ネタを切り売りしつつ、セレブな生活は維持して、しかしその「ネタ」が引き起こすであろうトラブルの解決は本国(イギリス)に求める。
その例が、数々のインタビューで多額の出演料を得たと思われる後、パパラッチが増えて転居、周辺住民からの苦情で転居、はたまた「イギリスに行くとテロに遭うかもしれないから、イギリス警察を雇いたい」というリクエスト。
彼らが渡米してから、インタビューなどは出ないで、不動産収入や外交アドバイザー的な仕事等で暮らしていたら、徐々に表舞台からほぼ消えていき、イギリスに行く際も、「帰れ」コールが起こるような事はなかったかもしれない。
勿論、収入の額としては満足できなかったかもしれないが。


今回の「SPARE」で、ハリー王子が失うものは大きいかもしれない。
戴冠式はまだだが、父、チャールズ王の不況を買い、兄、ウィリアム王子との間に自ら深い溝を作り、タリバンでの軍事作戦での内情を暴くことで、ISの怒りを買い、「母国を捨てるだけではなく、母国を売って豪奢な生活をしている」として、国民の怒りを買った。


イギリス王室に君臨した祖母、エリザベス女王は既にいない。(ハリー王子はお気に入りだったらしいので、一番大きな後ろ盾をなくしたという事だ)


半面、兄ウィリアム王子は父チャールズ王よりも高い支持率を保っている。
ホームレスに混ざってホームレスが売る雑誌を自分でも売ってみて(勿論変装している)、彼らと会話をし、どうして路上生活に至ったか、という事を肌で知ろうとしたり、イギリス王室のSNSも、ほぼウィリアム王子とキャサリン妃が運営している。二人は、各訪問先での子供たちや病院のスタッフとの会話を楽しみ、クリスマスケーキをどっちがキレイに作れるか競争をしたり、時にはサッカーのシュート対決をしたりして、「王族がやってきた」というだけではなく、「一緒に遊んでみよう」と、国民と触れ合っている。

英王室のYouTubeチャンネルや、Instagramを見ていると、真面目な時もあるが、特にInstagramはほのぼのとしていて、すごく楽しく見ることが出来る。

 

キャサリン妃が、自分がお産の時に滞在した病院に慰問に行ったとき、帰り際にお産の間、担当としてついていてくれたナースを見つけて、「ああ!!!やっと会えたわ!!!」とハグしたり、児童施設への慰問では、子供たちのプレイスペースに、ハイヒールを脱いでストッキングだけの足で入り、ボール遊びをしたり、「この子のお名前は?」と、子供に人形の名前を聞いたり・・・
リメンバランス・デーに訪問したのであろう、おそらくウェールズのどこかの街では、「リメンバランス・ポピー」を知らない男の子に、「私のこのポピー、ほしいの?あげるわ」と、ピンで留めていたポピーを外し、「これはね、戦争で亡くなった人を
思い出す、大事に思うためのお花なのよ」と教えてあげながら、その子のお母さんにピンを渡して、「留めてあげてくれる?」と言っていたり。
(子供にピン留めする時にケガをさせないように、お母さんを探したのだと思う。子供は動いちゃうからね)


兄ウィリアム王子と、弟ハリー王子。
ハリー王子は、自らがかけた呪縛の言葉、「SPARE」を振り切ったつもりかもしれないが、今回の出版で、余計に呪いの度合いが強くなってないことを祈るばかりだ。