氷河期初期世代おばはんの日々うらうら

就職氷河期初期世代のおばさんが時事問題に思ったりすることや、日々のあれこれ

「この国から出ていけ!」にはもう意味はない

そういえば、正月早々「あ~あ」と思って、書いてみようと思っていたことを忘れていた。
田原総一朗朝まで生テレビ騒動だ。

田原総一朗が、たかまつななに対して「この国に絶望的だったら、出て行きゃいい!」「この国から出ていけ!」と激怒した、という件。
放送終了後には仲直りをしたらしいが・・・


田原総一朗    1934年生 88歳
たかまつなな    1993年生 29歳

 

ほぼ、60歳の年の差のある両者。
20代後半のたかまつが、「若者がどんどん社会を変えていくことが必要。そのためには教育が必要」と至極もっともな発言をしたことに対して、80代後半の田原が激高し、「この国から出ていけ!」と、「討論」番組で怒鳴りつける。

 

いやいや、おかしいでしょ。
放送後に仲直りしたとか言うが、田原総一朗はそもそも「司会」でもないし、「ファシリテーター」でもないし、むしろ「討論をつぶす」と断言して始めた番組だからとか、「タブーに切り込む」番組だから、とか、そんなのはどうでもいい。


88歳の高齢者(注:聞き返しが多くなっていることや、どもり、滑舌から、年相応になられていると思えた)が、意見を求められて答えた29歳の成人に、公共放送で「怒鳴る」というのは、正直、アカデミー賞授賞式で司会にビンタしたウィル・スミスより見苦しい。
しかも、その怒鳴った内容が「国から出ていけ」って・・・


そういえば、田原総一朗は以前から、ひろゆきや成田悠輔に、「こいつらは日本を捨てたんだ」的なトンデモ発言をしていたなぁ、と思い出した。
いや、私が知る限り、プラス調べてみても、お二人とも国籍日本ですが・・・
日本から居住地を他国にしても、日本人ですよ??
海外在住の日本人は全て売国奴とか??
いやいやいやいや、それおかしいでしょ。どこに住んでいても国籍は日本だから、何かあったら駆け込む先は当該国の大使館や総領事館ですが??


自分自身が、フリージャーナリストとして、諸国を訪問してきたであろうに、それが「取材」や「旅行」ではなく、「仕事」や「居住」であったら日本人は日本人と名乗れなくなるとでも思っているのだろうか?
じゃあ、企業から駐在員として海外で3年間とか、滞在+仕事をしている人は、企業に「無理矢理売国奴にされた」位置づけなのか??

逆に、日本に住んでいる外国籍の人は、「日本に住んでいる」という事で日本人なの???

もう、ツッコミどころしかない状態である。


田原総一朗は、先にも書いたが1934年生まれ。戦前生まれという事だ。
戦後の混乱を学生として過ごし、1964年に東テレでディレクターとしてスタートしたようだが・・・まぁ、時代もあったのだろうが、あれこれと今ならご禁制の事を色々やってこられた方である。(Wikiを見てもらえると分かると思うが・・・)


私が大学時代、朝ナマはレギュラー放送で、題材が面白そうな時にはたまぁに見たこともあったが、最初から最後まで見たことはおそらくない。(あったとしても1回だけだな。知り合いが出てたので)
ギャーギャー言い合いをして、うるさく、しかも田原総一朗の声が一番うるさいので、最後まで見るには耐えられなかったのが正直なところ。
淡々と進む討論番組ではなく、「場外乱闘歓迎」だったので、討論番組というよりも討論バラエティだったのかな、と今となっては思う。

 

それが、おそらく1980年代後半から、1990年代前半ってところか。
その頃から、田原総一朗は「アンタはもういい!!」とか、「黙れ!!」というような罵詈雑言も吐いていたと思う。
辛辣、というのではなく、「言論を封じる」系のそれらの言葉が好きではないので、私は久米宏筑紫哲也の番組の方を選んでいた記憶がある。


逆にその「攻撃性」が好きな人には、朝ナマも面白かったのだろうが・・・。


現在、日本には仕事で来ている人、日本が好きで住んでいる人、日本で生まれた人、と、かつてよりは多くの所謂「外国人」がいる。
勿論、観光客もいる。
そして逆に、日本から出て海外で仕事をしていたり、留学したり、結婚したり、または「その国が好きで」海外に住んでいる人もいる。
コロナ禍と、収入減(というか、天引き増)で少なくなってきたが、旅行に行く人もいる。


それでも、戦前生まれの田原さんには、「日本から出ていけ!」という言葉の空虚さが分からないのだろうか??
日本から出てけ、と言われたら、あ、そっすか、と海外で仕事を探し、住むところを探し、じゃあね~~と行ってしまう、いや、行けてしまう人は沢山いるわけだが(介護の事情や子供の学校、ペットの問題等で行けない人もいるが)。
私自身、およそ30か国くらいは旅行と仕事で海外に行ったと思うし、金銭面が何とかなれば、スーツケースとトラベルハンドバック一つで「じゃーね」と海外に行くことは可能だ。
住むとなったら、引っ越し等も必要だし、ペットのことが何とかならないと厳しいが、「行く」だけなら問題はない。

(実際、マイレージが失効する!という事だけで、なんの用事もなく香港に行ってボーっとしてきたことがある。)


そして、海外にいる間、一か国のみ滞在したり、数か国回ったりと色々したこともあるが、私は自分が「日本人ではない」と思ったことはない。
(実際には、海外の人からは間違われるんだけどね・・・Chinese Americanですか、とか。)
日本のパスポートを持ち、必要なら日本で取得したビザを使って滞在する。
帰国する時も同じだ。


その「海外に滞在している間」、田原さん流では私は「日本人ではない」「日本を捨てた」という事になるのだろうか?
いや、ならない。
では、例えば永住権を取って他国に住むようになったら、どうだろう。それが結婚だろうと(年齢的にこれはないかな。笑)、仕事や自分のライフスタイルのためだろうと、永住権を取り、他国の国籍を取得したら
おそらくその時に初めて、私は「もう、日本国、日本人ってのは私のルーツ、ってことになったんだな」と感じるのではないだろうか。
もしかしたら、永住権は取らず、滞在ビザの更新要件などで何度も帰国し、また行って、を何十年も繰り返したら同じように感じるのかもしれないが、現在50代の私の年齢を考えると、永住権取らず、国籍変えず、の状態で「日本を捨てた」と感じることはないだろうと思う。


つまりは、田原総一朗が怒鳴りつけた(怒鳴ったからには、相手にダメージを負わせることが出来ると信じて発した)言葉である、「日本から出ていけ!」は、既に、何の意味もないのだと思う。
だからこそ、たかまつなな「ノーダメージ」だったし、周りも「あーまたなんか吠えてる」くらいだったのでは??

 


海外を歩いてみると、都市部でこれだけ人種が偏っているところも珍しいな、と思う。
東京の日中の光景と、ロンドン、パリ、ローマ、シカゴ、デュッセルドルフミュンヘン。比べてみると、東京はやはり圧倒的に「アジア人」が多い。
最近は中国人、韓国人もいるとは思うが、ぱっと見は、「日本人だらけ」だ。
島国ということを加味しても、同じ島国であってもロンドンとは違う。
(似たような光景があるのは、ソウルと台北くらいか?それでも、やはり東京の方が「アジア人以外」が多いような気はするが。)

 


それぞれの国には、その国の国籍を持った人もいれば、違う国籍だけれど居住している人もいるし、国籍自体を変えて定住している人もいる。
または、旅行で来ている人もいれば、留学している人もいる。

田原総一朗は「日本から出ていけ!」という言葉には、まだ「重み」があると思っているのだろうが、実際は、既にさほどの重みはない。
残っている障壁は、「外国語で暮らす環境は怖い」というような利便性の問題や、「家族やペット、親族などのしがらみ」、そして「仕事の有無」ではないだろうか。


地図上では島国で、「日本は日本人が住む国」と見えるかもしれないが、もう時代は変わっている。
それを感じられない、まだ戦前、戦中、戦後のカラをお尻につけている人で、発言力のある表舞台に立っている人は、時代の変化を受け入れて勇退していった方が、その人の人生で有終の美を飾れるのではないだろうか・・・。
ね、田原さん。