氷河期初期世代おばはんの日々うらうら

就職氷河期初期世代のおばさんが時事問題に思ったりすることや、日々のあれこれ

女叩きにいそしむ弱者男性とは何だろう

ここ数日、Twitterで女叩きのつぶやきが目に飛び込んでくることが続いて、その中の一部には思わず反応してしまった。
そんなわけないだろ!
と思うような内容だったからなのだが、その後、ちょっと考えてみて、最近言われている「弱者男性」と「非モテ」、また本来使われていた「インセル」は同じもの、イコールなのか、が気になったのでちょっと書いてみる。


女叩きをしていたのは、出ているプロフィールや情報では、男性。年齢不明。アイコンは女の子のイラスト。統計家と名乗っているが不明。
職業不明。つぶやいている内容から、「非モテ」であることは分かるが、収入などは分からないので「弱者男性」かどうかは不明。
また、性体験なども分からないので「インセル」かどうかは不明。


と、上に書いたので気付いた方がいるかもしれないが、結構ごちゃまぜで使われる「非モテ」「弱者男性」「インセル」。
個人に対してこれらの言葉を使おうとすると、微妙に定義がズレてきているような気がするのは私だけだろうか。


まずは、日本より先駆けて作られた言葉であるインセル
こちらは「Involuntary celibate」の二語の頭「In cel」から作られた造語で、そもそもはカナダ発祥のようだ。
ただ、初期は単に「パートナーがいない男女」という事で使われていたが、徐々に意味合いが変化していき、現在は「女性蔑視主義者」の意味で使われるようになっている。

Involuntary celibate
Involuntary = 不本意、不随意、
celibate = 独身、禁欲

 

この、Celibateが独身、シングルという意味合いから変化し、禁欲主義者、そこからまた独身の意味に戻るが、「非自発的独身者」と言う意味に現在着地しているようだ。
こう書くと非常にまだるっこしいが、つまりは「望んでなかったけど、未婚です」から、「望んでもいないが、結果ぼっちです(性交渉する相手がいません)」という変化を遂げたわけだ。
2014年のエリオット・ロジャーの銃乱射事件から広く認知され、日本でロジャー崇拝のインセル、というのはあまり聞かないが、アメリカでは今でも銃乱射事件やカップル襲撃事件などの犯人が、遺書として残したものにロジャーの名前があったり、SNS上で
自分はインセルだと言っているケースは続いている。


次に、「弱者男性」
弱者男性、という言葉が急激に広まったのは、安倍元総理暗殺からだと思うが、一応定義としては「独身・貧困・障害」等、弱者になる要素を備えた男性、という事のようだ。
ひろゆきが「弱者男性」の中から、「無敵の人」が生まれて来る、と捉えることも出来る発言をしたことから、一気に広まった感がある。
この弱者男性、というものは、反フェミニズム、反リベラリズムミソジニーとセットになる、という面白い構図になっている。

 

フェミニズム=男女平等に反対
リベラリズム自由主義に反対
ミソジニー=女性蔑視

 

となるわけだが、「自分は弱い立場」だから、男として女を下に見るし、女に仕えてほしい。
これは分かる気がするが、自由主義に反対、となると、自由主義には「人権」や「個人主義」「民主主義」が入ることはすっぽり抜けているように思う。
もしくは、「自分の人権、個人としてのプライドは確保」しつつも、他者の人権やプライドは認めない(特に女性の)。そして自分が不幸なのは資本主義・民主主義のせいなので、個人同士が争うような自己決定を認めず、保護されるべき(誰に?国にか?)と
なるのだろうか。

リベラル(自由主義)と対極にあるのは一応「権威主義」とされているが、「保守主義」と取る人も多い。
弱者男性、を自ら名乗っている人がどちらの意味で自分をとらえているのかは、正直分からない。


そして最後が非モテ
異性にモテない状態、そういう状態にある人、という定義になるが、少々そこから発展して「性経験がない」という意味も含まれて使われているようだ。
基本的には男女関係ない言葉だが、あまり女性で「私、非モテなんだー」という人はいないような・・・少なくとも、リアルでは聞いたことはない気がする。


まとめると、
インセル」:望んでないけど独身で、性交渉の相手もいません。
「弱者男性」:独身、貧困です。女嫌いです。守ってくれない自治体や政府、国も嫌いです。
非モテ」:モテません。パートナーいません。性交渉したことありません。
なのかな?

 

私が実際に目にした、Twitterで女叩きしていた人は、ちょこちょこと文脈に「非モテ」「弱者男性」を出してきていた。
過去には、明らかに自分のことを「非モテ」「弱者男性」としてつぶやいていたこともあるようだし、Twitterのスペースではそのような発言もしているらしい。

しかし、上に書いたように、「非モテ」と「弱者男性」はイコールの言葉ではない。非モテでも、稼ぐ事が出来ていたり、自分の生活に満足していたりした場合は、弱者男性には該当しないことになるからだ。

 

とすると、彼は自分はモテなくて、独身で貧困、もしかしたら障害もある、そして生活に満足していない、という事を声高に言っていることになる。
また、彼はことあるごとに「高収入の女性は、下方婚すべき」と言っているのだが、文脈で「恋愛の結果」が語られたのを見たことがないので、恋愛抜きで家政婦(家政夫?)を雇うように、高収入の女性は定収入の男性と婚姻すべき、と言っていることになる。
いや、恋愛抜きでって・・・お見合いみたいな過程を想定しているのか、もしくは就職するように結婚する想定なのかは分からないが・・・

 

それでいて、彼は女性叩きをしている。Twitterのつぶやきは殆どが女性叩きだ。
全く違う意味合いで収集されたデータを、結論ありきで読み取っているので、全てが「女性が悪い」「女性の自業自得」「女性がバカ」になるようになっているが、これは普通に数学の統計を読み解く手法が間違っているように思える。


そうすると、彼は「自分は非モテで、独身貧困なので高収入の女性に養ってもらいたい。但し、女は三歩下がって男を立てるべし」と言いつつも、その「自分を売るオファー」を「女性叩き」をすることで行っていることになる。
女性に「恋愛せずに自分を愛して養って」と言いながらも、「女はこんなにひどいバカだ」と言う・・・
いや、そんな態度では普通に誰もそのオファーを受けないと思うが。

 

恋愛ありきだとしても、「女はバカだから嫌い」と言っている人に自分から近づいて、女性から口説いて「私が稼いでくるから、遊んでていいよ」と言ってくれるパターンは、あったとしてもなかなか時間がかかりそうだ。
しかも、彼が「下方婚すべし」と言っているということは、高収入ではないのだろう。共働きをしてくれたらまだいいが、これが「仕事しても殆ど稼げないし、もうヤダ。でも家事もだるい。遊んでいたい」ということなら、女性はフルタイム勤務、家事全部、
彼が望んだ時には必ず性交渉をする、となってしまう。
(しかし何故か彼のつぶやきには子供は登場しないので、性交渉しても子供は出来ない前提なのかもしれない)
よっぽど惚れぬいた相手ならあるのかもしれないが、私だったらこれは困る。
別に私が稼いでくるのは構わないが(今も一人暮らしで、自分で稼いでるからな)、大人の男一人が食い扶持に加わるのなら、共稼ぎ、もしくはせめて家事はやってほしい。
夫が仕事、妻が家事、という昭和パターンの逆ってことだよね。


下方婚すべき、と言い切っているのなら、普通に考えて「女叩き」はやめた方がいいだろう。
別に女を持ち上げろとも、褒め称えろとも言わないが、貶めていたら、そりゃあこっちは嫌な気分になる。
それは私だけではないと思うのだけど。


そして何よりも彼の中に内包されている矛盾と思われるのが、こういう「女叩き」「ヘイト」をするつぶやきのアイコンが、可愛らしい女の子のイラスト、という事だ。
彼自身は、自分が叩いている「女の子」になりたいのだろうか。その羨望、女の方が楽そう、という思い込みから、男性である自分がより損をしていると感じ、男性であって「女の子」のポジションにつきたい、という願望があるのだろうか。


と、あれこれ考えてみたが、やっぱり最終的には恋愛なしの下方婚はナイな、としみじみ感じている。