氷河期初期世代おばはんの日々うらうら

就職氷河期初期世代のおばさんが時事問題に思ったりすることや、日々のあれこれ

性被害は、誰でも遭う可能性があることを念頭に置こう。

ジャニーズ性被害問題で、池上彰氏がコメントした中の「男性が性被害を受けているという事が、長らくピンとこなかった」という一言。案外これが、ある意味正直な感想なんだろうなぁ、と思った。


確かに、男性が男性から加害を受ける、というと例えば暴力(殴る蹴る等)や罵り合い、または金銭要求(カツアゲ的な)をスッと思い浮かべてしまうのかもしれない。
特にヘテロセクシャルな男性からすると、「まさか」とか、「特殊な人達のみ」とか、「性癖だから」という事で「犯罪」と考えなかったのだろうな。
この「ピンとこなかった」、というのはいかにも「ありそうだな」と感じさせる一言だった。


池上彰さんは1950年生まれの72歳。
ニュースキャスターや報道部、現在はフリーのジャーナリストとして活躍されているから、「耳にしていた」筈だとは思う。
ご本人もカトリック教会内部で行われていた少年性愛などは聞いていたが、結びついていなかった、と仰っているが、どちらかというと「自分の住む世界とは違う、特殊な世界」という感覚だったのではないだろうか。


「そういう」事があるのは聞いたことがある。
ジャニーズの中でそういう「まことしやかな噂がある」のは知っている。

しかし、それは「自分が関係する事件」「自分が取り上げたい事件」ではなかったのだろう。
どちらかというと硬派な問題を、分かりやすく説明するというスタイルを取っているので、余計に彼のアンテナには引っかかっていなかったんだろうな。


カトリック教会の中で行われていた少年性愛も、1950年以降(おそらく、第二次大戦以降、というのが節目だったのだろう)から行われて来ていて、3000人以上の聖職者が関係していた、とも言われている。(もっと前から横行していたとは思うが、被害をたどることが出来たのがその頃から、という事だろう。)
日本でも男娼(陰間)を買っていたのは僧侶が多かったとも言われているし、女犯が罪、とされた宗教社会の中で、まだ中性的な雰囲気を持つ少年が性対象になるのは、皮肉にも「そうだろうな」とスッと納得できる。
それが性行為ではなかったとしても、例えば高位の聖職者の隣に美少年が座っている。
身の回りの世話をするのは修行中の少年達である。
等など。


ジャニーズの場合は、「逆らったらデビューさせてもらえない」のような状況。
カトリック教会では、「神の許し」とトレード、と言うような状況であろう。


女性、女児への性加害と同じく、男性、男児への性加害、また高齢者が被害者になる場合もある。
想像するに、男性が一番「被害者にはならないだろう」と思っているのが成人男性かもしれないが、成人男性でも被害者になることは往々にしてある。
「絶対に被害者にならない」という属性はない。
生後7か月の赤ちゃんが被害に遭う場合もあれば、94歳でレイプ被害に遭う人もいる。
男だから、女だから、赤ちゃんだから、高齢者だから。
全て「この属性なら大丈夫」というものはない。
女性は大変だねぇ、とのほほんと言っている日本人男性が、自分よりガタイのいい男性から加害される可能性もあるし、ガタイは同じくらいでも、集団で来られたら勝てないだろう。
「自分は大丈夫」と思っている人は、楽観的すぎると思っておいた方がいいだろう。


その全てが、「被害者は悪くない」、という前提でしっかりと捜査されるべきだし、加害者は断罪されるべきだ。
「男は妊娠しないんだからいいだろう」というような流れには持って行かず、加害された、という点で捜査、また時間がかなり経過してしまっているものでも、調査はしてほしい。
「昔のことだから」としてしまうと、「悪い例」がまかり通ってしまう事になる。
例え罪に問う事は出来なくとも、「本来ならば、あなたは逮捕されていたんです」という事を加害者が理解しなければ、加害者が生きている限り、いつどこで再犯するかは分からない。
加害者が亡くなっていたとしても、「こういう行為は、犯罪である」としていかないと、被害者側は「自分が悪かったのだろうか」、「自分に隙があったのだろうか」「こんな自分は人からもう愛されないに決まっている」と思い続けてしまう事になる。


ただ、こういった「性犯罪」とごっちゃにならないようにしてほしいのが、本当に男性同士でお付き合いしている場合や、パートナーとなっている場合、女性同士も同じだ。
そういう日本の現法律では宙ぶらりんになっているが、結婚しているのと同じ関係、というような人達と、こういった犯罪行為はちゃんと切り分けないといけない。
この切り分けは、男女の夫婦間でも「無理矢理した場合は、レイプだ」という考え方と同じだ。

 


また、加害者を純粋に「加害者」として断罪する、という事が大事なのと同じに、その場で、もし自分の目の前で「この人、痴漢されてるかも」とか「盗撮されてるかも」、「悲鳴が聞こえた」という時に、すぐ「何も出来ない」と思うのではなく、スマホの画面に「大丈夫?」とテキストで打って見せるとか、自分のカバンを加害者と被害者の間に割り込ませたりすることは出来るかもしれない。
悲鳴が聞こえた、なら、物陰からこっそり警察に電話する事は出来るかもしれない。
周りに、手助けしてくれそうな人を探して、協力してもらう事は出来るかもしれない。

 

被害者の被害を最小限にする、被害に遭わないように、出来る防犯対策を取る、何か手助けできそうな時は動く、そして勿論、自分が加害者にならない。


最近は刑法が変わったことで連日のように盗撮犯逮捕とか、不同意性交容疑で逮捕とかの記事が上がる。
体感的にも、治安が悪くなった、と感じることは多々ある。
それでも、一人一人が小さなことでも動いていくことで、日本がスラム化していく速度を遅らせることは出来ると信じたい。

そう思ってくれる人がもっといることを祈るのみである。

 

2023.8.7 秋海棠美樹