氷河期初期世代おばはんの日々うらうら

就職氷河期初期世代のおばさんが時事問題に思ったりすることや、日々のあれこれ

異次元なのは世襲政治家の方だったってオチ

さすがは「異次元の」とついただけはある。
育休中にリスキリングとは、どれだけ政治家(自民党)と国民感覚に乖離が生じているか、をよく表した言葉だ。

「育休中など様々な状況にあっても、主体的に学び直しに取り組む方々をしっかりと後押ししていく」

という流れなので、「育休中に学び直しをしろ、と強制しているわけではない」と必死になって火消しをしているようだが、そもそもが間違っている。
学び直しをしても、例え自分の業務に必要な、より高度な資格を取っても給与は変わらない(しかもそもそもが低い)ことが前提としてあり、学び直しをすることがメリットになるのは、転職(しかし日本は経験者優遇なので、資格を取っただけでは企業は採用しない)の時くらいだ。

 

私が長い会社員生活で、「学ぶこと」が誰かの給与に直結したのを見たのは、せいぜいが現場技術職の人が工場で必要な資格を取った時くらいだ。
玉掛けとか、フォークリフトとか。
主に経理をやっている私が、いくら簿記の資格を取ろうが、同僚がCPA取ろうが、それは給与には直結しない。
便利だ、と使いまわされるのがオチなので、むしろ「同僚に学び直しがバレると、転職準備だと思われる」ということを、自民党の方々は知らないのかな??
うん。知らないんだろうな。


そして、私が見ている限り、結構な人は学び直し、というか必要になることを学んでいると思う。
学校に行かずとも、自宅で英語や他外国語を学んでいたり、私のように簿記を勉強していたり、通信教育で心理士の勉強をしていたり。
完全に「お勉強モード」にはならずとも、日常で出来る範囲で学ぼうとしている人も多い。
映画を字幕で見る、ドラマに影響されてその背景となった事件を調べる、Instagramでも「日本語訳付き」として、有名人のインタビュー動画、ファミリービデオなどをショート動画として流している人もいる。
YouTubeでも語学関係のチャンネルは案外多い。
私もたまに見ているが、「イギリスとアメリカの英語の発音の違い」とか、「スコットランド訛り聞き取りチャレンジ」のようなものとか。
逆に、日本大好き外国人が自国と日本を比べて、「これはフランスにはない。すごく便利」とか、自国に旅行に行く日本人に向けて、地下鉄に乗る時は日本と違って行先はこう書いてあるから注意して、とか。
Twitterジョージア大使の投稿や、乗り鉄アメリカ大使の投稿なども人気だ。

 

そうした、「普段の行動」の中で知識を増やそうとしたり、まとまった時間は取れなくても少しずつ学んでいる人は多い。
それでも「がっつりと」学び直しをする人が目立たないのは、先に上げた転職準備と思われるケースや、最初の意欲はあっても仕事が忙しすぎて(もしくは仕事と家事、育児などの忙しさで)、挫折していく人が多いからだろう。
やる気があって始めても、多分挫折するだろうな、と奥底で感じているので人には言わない。


そういう前提があるのにも関わらず、それと育休を絡めたのは、二次災害以上にひどい。
女性が育休を取るのは仕方がない(マミートラックの口実にもなるから企業はOK)としても、男性の育休にアワアワしている企業にとっては、「育休は義務化されたから仕方なく取らせてあげるけど、その間に勉強しておけ。じゃないと復帰した時に降格するぞ」というパピートラックの口実を与えてしまったからだ。

 

そうなるとどうなるか、育休を取る男性の中には、しっかり子育てして、家族に向き合いたい、とちゃんと思っている人もいるが、その人達に「復帰したら・・・」の恐怖心を与え、子育てより資格取得、などに立ち位置を変えてしまう人も出て来るだろう。
育休を「やったー、お休み!」と考えていたナンチャッテ育休族には、「だって、復帰した時に給料下がると困るでしょ」と、堂々と「育児してるフリ」になるだろう。
下手したらワーホリと同一視するようなケースもあるかもしれない。

 

となると、女性のワンオペ状態に変わりはないし、しかも女性には、「寝ないで子育てしてる間も勉強しておけよ。首切るぞ」という負の連鎖になってしまう。石抱き拷問の時に、石を増やされるようなものだ。
ただでさえ大変なところに、復職も危ぶまれることになるのが見えていたら、積極的に子供を持つだろうか?


少子化対策じゃなかったんですかい?自民党さん??
女性の高学歴化で一時期出生率は下がるが、パートナーの育児参加率で、出生率が再度持ち直して増えていく、というのは既に北欧の国々が証明してるんですが?

 

これじゃあ、第二子を産みたいとか、それ以前に第一子すら産む気になれない人も出て来るだろう。
どんだけ追い詰めるんだ、と。


少子化対策、という目標に対して、「お金がないから産めない」という回答が多かった。
じゃあ、企業に賃金アップさせるために、自分が頑張って資格とか学位とか取って、昇進すればいいんじゃね?
と安易に考えて、「そうだ!産休、育休中に勉強する事を応援すればいいんだ!」って、アナタの頭の中が異次元なのでは・・・


学び直し(リスキリング、という言葉自体あまり好きではない。なんかカタカナで使ってるとただの意識高い系みたいだ。しかも「キリング」の方に目が行ってしまうし、「スキリング」という言葉を使わないのに、なんで学び直しだけ「リスキリング」
なんだよ)を推奨する事自体はいいだろう。
企業の中では、従業員に補助金を出しているところも昔からある。
しかし、それを「少子化対策」とするのはかなり無理がある。

 

様々な人が「育児したことがない人のいう事」と言っているが、まさにその通りだと思う。
自分の子供の子育てすら、してないし、目を向けたこともないのだろう。


海外で政府主導の少子化対策が成果を出したと言われているのは、スウェーデンとフランスがよく上げられるが、どちらも「男女共に育児をする」「不安なく育休に入れる」、「育休中も、あまり給与ダウンしない」、「税金の控除など、子供が増えるごとに財政的に手厚くフォローされる」というような内容だ。

 

長らく日本で言われていた、「家事育児は母親の仕事。特に男は育児で出来る事はあまりない」という思い込みを真逆にした内容だ。
育児で、男女の違いは母乳が出るか出ないかだけ、と今は言われている。
第一子出産後、乳児育児の時にパートナーがどれだけ一緒になって頑張るか、で第二子の出生率は変わってくる。


異次元の少子化政策、とまで言い切ったのだから、もっと真剣に向き合って頂きたいものだ。
世襲議員の方は、選挙に出る前に保育園で実習、老人ホームで実習を義務化してもらったら、もう少し乖離がなくなるだろうか?
教職を取るには必要要件になっているんだから、不可能ではないと思う。


天皇陛下だって育児に参加したのに・・・世襲議員がいるところこそが、どうも「異次元」らしい。
陛下が国民と同じ次元にいてくれる、という事だけでも嬉しく感じるぞ。トホホ。