氷河期初期世代おばはんの日々うらうら

就職氷河期初期世代のおばさんが時事問題に思ったりすることや、日々のあれこれ

産休育休、文句を言う前に正しく知ろう

産休、育休問題がまた盛り上がっているようだ。
私自身は出産をしなかったので、自分が取得したのではなく、産休・育休の人の業務の穴埋め、代理を何度もしてきた立場になる。
ただ、自分自身の休職、親族の介護は経験しているので、その立場から改めて考えてみようと思う。


1.産休(産前産後休業)
さすがにこれに異を唱える人はいないと思いたいが、これは労働基準法にしっかり規定されていて、予定日を基準に産前6週間、産後8週間は本人(産婦)が請求すれば、使用者(企業・団体)はその人を就業させてはならない、というものだ。
これは多胎(双子、三つ子等)の場合は延長される。
勿論、「出産予定日」が基準になるので第一子、初産の時には特に前後することがままあるので、幅をもたせながら規定している企業も多いと思う。

この間の給与が出ない場合は、健康保険組合から出産手当と出産育児一時金の支給がある。(条件付き)
健保組合から支給されるということは、基本、毎月給与から天引きされている健康保険料が健保組合に行き、条件を満たしたときにそれを受け取っていることになる。

 

2.育休(育児休業
こちらが問題になりやすい育休。子供を養育する「義務のある」労働者が、1歳に満たない子について取得できる休業、であり、育児介護休業法で定められているものだ。
保育所に入れない場合に例外的に延長することが可能で、制度的には最長2歳まで、となっている。
育休に関しては企業側が独自に定めている部分もある。

男性が取るパパ育休と呼ばれているものも、同じく育児休業だ。

この育休中に、企業側が給与を支払う規定を定めていなかった時にもらえるのが、育児休業給付金になる。
これは雇用保険からの給付されるものになるので、こちらも毎月給与から天引きされている。(給与明細を見てみよう!)
なので、雇用保険として天引きされたものが、条件を満たして申請した人に支払われる、という仕組み。


3.休職
休職には色々な種類があるが、一番誰にでも関係する可能性があるのが傷病休職だろう。実際、私も取得したことがある。
病気、ケガなどで長期間休む時に使う。
こちらは法律ではなく、企業が各自規則を作っているので企業、団体によって内容は変わってくる。
ただ、法律として「休職」の定めはなくとも、労働基準法に「企業は労働契約書に休職について記載すること」となっているのだが、社労士の中には「定めなくともいい」と言い切っている人もいるので、微妙なライン。
ある程度の規模の会社だとほぼ確実に休職規則があると思うが、中小規模の企業の時は入社後、確認しておいていいと思う。

休職の条件や認められる期間、その間に何をどちらが負担する等を知っておかないと、休職制度があるから利用したが、復帰条件等のトラブルで解雇になる、と言うこともあり得るので注意。

ちなみに休職中に受給できるのが「傷病手当金」になるのだが、傷病手当金健保組合からの支払になるので、健保組合によって受給条件が違っている。
骨折や交通事故などでのケガだと、最長期間の確認くらいで何とかなると思うが、病気療養の時が結構厳しい。
私が休職した時は1度目は無事に傷病手当金を受給出来たが、2度目に「要件に満たさない」となって受給できなくなったことがある。
病気で働けないのに、手当も出ない、しかしずっと給与から天引きされてきた、となると本当に腹立たしいが、なすすべはない。
反撃できるとしたら、おそらく病気が治ってから、弁護士を立てて裁判とかになってしまうのではないだろうか。
なので受給要件はよーく調べておいた方がいいかと思う。


4.介護休業
介護はこれからもっと問題になってくると思うのだが、こちらの方は育児・介護休業法で定められてはいるが、原則企業側との話し合いで決めて下さいベースになっている。
適用される条件も結構厳しく、特に難しくなるのが「対象となる家族」の範囲と、要介護状態の認定だと思う。
例えば、両親の兄弟姉妹に独身者や伴侶に先立たれた人がいた時、その人たちは叔父叔母の関係になるが、その人たちは「対象となる家族」には含まれない。
しかし、叔父叔母が要介護(別に老齢だけではなく、病気でも常時介護を必要とする状態なら可)になった時、その人が独身だったらその人の兄弟姉妹も同じ年齢層になるので、病院や施設に頼めない場合、老々介護になるか、一つ下の世代、つまりは子世代が
手替わりになるか、という選択肢しかないことになる。
その時、子世代が介護を担うことになっても、介護休業は取得できないことになる。
「既婚者」が減っている今、この「対象となる家族」の範囲は問題になると思うし、実際、私は独身の叔母の介護をするために全て有給休暇をつぎ込み、しかし結果として次の査定の時に大幅な降格+所謂、懲罰的異動になり、最終的には退職したことがある。
この「家族の範囲」はこれから、問題になってくると思う。

介護休業の場合は、「介護休業給付金」を受け取れる。こちらも、育休と同じく雇用保険からの給付となるので、毎月給与から天引きされているもので、そこから支給されることになる。
そしてまた、この給付条件も面倒くさいことになっているので、事前に要チェックだ。


と、大きな4つの「休職・休業」を挙げてきたが、私はわざと「天引きされたものから支給」という書き方をした。
何故かというと、実際の流れとしては今、我々が天引きされている分というのは「今、必要な人に使われる」という所得再配分方式になっているのが「少子高齢化」の一番の問題になっているからだ。
給与天引きになっている分、現役世代は「払っているのはこちらだ」と思ってしまうのだが、自分たちの世代は「払った分、もらうことは出来ないだろう」と言われ続けてきているからこそ、高齢者に対していい感情を持てなくなる。
高齢者は、「俺たちも払ってきたから、もらえて当然」と思うだろうから、そこで当然のごとく分断が生まれる。


それに加えて、今の現役世代から見ると、現在もらっている世代は「男は仕事、女は家事」だったから、払ってたのは夫婦のうち1人だけじゃないか、という視点もある。現役世代の自分たちは夫婦共働きで、2人とも払っているのにもらえる額は少なくなると
言われていて、夫婦のうち1人しか働いていなかった高齢者世代が払った分より多くもらえている、と感じるのだ。
しかも、そもそもが現役世代で「高齢者世代の時のように、給与が順当に増えて行った」人が少ない、というのも大きい。
現役世代の大半が失われた30年の当事者であり、就職氷河期世代のように、「新卒採用」自体のチャンスがほぼなかった、という世代も混ざっている。
これは本当にねじれている構造だと思う。

だから、私はわざと「天引きされたものから支給」と書いてみた。
実質は、自分が払った分が自分の名前付きでプールされて、そこから支給されているわけではないけれど、年金以外の、上にあげた4つは「現役時代」に支給されるものだからだ。自分が払っているのだから、もらって何が悪いくらいの気持ちで堂々と支給して
もらっていいと思う。
それくらい開き直ってないと、「損させられている感」が強すぎる。

 

そんな状況の中、「少子高齢化」は加速して(当たり前だ)、何とか出生率を上げようとすると、最初の「産休育休問題」に戻ってくるわけだ。
炎上する部分は、「期間が長い」とか、「育休明け退職」とか、「連続育休」とか、「その間のフォロー」に対することが多い気がする。
私は何度も、同僚の育休の穴埋め業務をしてきたが、あまり嫌な気持ちをしたことがない。
業務量が多くてつらかった事も多かったが、もっとブラックも知っていたので耐えられた、という部分もあったかもしれない。
それでも、他の部署で同じように穴埋めをしている人から、「仕方ないんだけどさー」という感じで愚痴を聞いた事もある。
そういったものも合わせて炎上を考えてみると・・・

 


・そもそも「出産」が母体に与えるダメージを知らない、または自分は大丈夫だった、という事で他のケースを理解しない人が「産休だけで充分」のように誤解しているケース
→ よく、欧米では産後すぐに復帰してる!と言われるが、欧米では無痛分娩が主流なのに加え、骨格の違い(骨盤の大きさ、広さ等)から母体が受けるダメージに差がある。無痛分娩の方が母体への影響はまだ少なくなるが、日本では「痛みに耐えてこそ母」の神話があるので、無痛分娩どころか、医療的に帝王切開になった場合ですら、蔑まれたりもする文化が残っている。(同じアジア圏の韓国・中国・台湾・香港等は無痛分娩が日本よりも広まっているので、母体回復は順調なケースが多い)
また、通勤自体があの「地獄の満員電車」が多い状態では、体も回復していなければ育児で寝不足のフラフラな状態で通勤することはかなり難しい。
すぐ職場復帰している人は、欧米だと車通勤だし、日本だと自営業だから通勤と言うほどの距離ではなかったりする。

 

育児をしなかった人達が、育児の大変さを理解できず、それよりも企業に与える影響の方を大きく考えてしまう(パパ育休が広まることで、自分が初めて「育休の同僚のフォロー」などに回ることになるか、部下の人員配置に悩むことになると戦々恐々と
している可能性もある)


・自分は頭を下げて育休をもらったり、保育園にあぶれて離職することになったりとツライ思いをしたのに、今は「少子化対策」として堂々と長期の育休をもらい、保育園が決まるまで育休延長をしてもらえたりしているのを見て、モヤモヤする


・育休等、休んでいる間の給付金の出所が「企業そのもの」が給与として払っていると勘違いして、「休んでるのに給料もらってる。給料泥棒」と腹を立てている(まぁ、社会保険料の企業負担分はあるけれども、それでも給付金は給与ではないことに注意)


・独身者、または子供を持たなかったカップルが単純に「休めていいねぇ」とやっかみで言っている


・同僚、部下がパパ育休を取ることで、取得しないで育児から逃げていた人が妻から責められたり、周りからネチネチ言われるのではないかと思い込んで、パパ育休なんていらない、という態度で妨害したり、「そもそも女の育休自体が長すぎ」と論理を捻じ曲げている


・育休を取っている人のフォローが大変で、現在進行形で疲弊している人が思わず責める発言をしてしまったり、過去にひどい目に遭ったことがある人が苦言を呈してしまったりしている。

→ これは、育休を取っている人が悪いのではなく、本当は「穴埋めサポートをさせているのに、評価もしなければ給与も変えない」企業側が悪い。怒る相手を間違えないようにしないと。


こんなところなのだろうか。
過去に、育休取得者でひどい態度の人がいた、等トラウマ体験を持っている人が反射的に嫌な気分になってしまうケースもあると思うが、案外そういう人は声高には言っていない気がする。私の目につかないだけかもしれないけれども。


こういう事を言う人がいる限り、少子化のスピードを緩めることすらできないだろう。むしろ加速してしまう。
それでなくとも育児がしにくい国である日本。
「そんなに言うなら、やっぱり男は仕事、女が家事育児でいいじゃないか」という人もいるだろうが、他国が少なくとも「男女」、または「+LGBTQ」の視点からビジネスをしているのだから、「男」という一つだけの視点を持っていなかったら、日本発のビジネスが大きく展開していくことはあまり期待できない。
多角的に見て、商機をつかんだりするには、色んな土壌の人がいる方が絶対に得なのだ。
それに、「男は仕事」とやっていても、そうやって集中できる環境を作られているはずなのに日本人男性の幸福度は低いのだから、やっぱり何か、ボタンが掛け違っているのだと思う。

 

「うまく力を抜き、うまく働き、家庭にも居場所があり、会社以外の交流もある」
という状態を作ることが出来るようになる足がかりになるのが、今の少子化対策にあるようにも思う。
上を見ては文句を言い、下を見ては蔑み、横を見ては闘い、家に戻って威張り散らしてストレス解消するくらいなら、「おうちの自分」を作って、生きやすくしてみるのもいいのではないだろうか。
それをすることで、家事スキルも身につく。
家事が自分で出来るということは、例えば奥さんが長期で出かけた時に、「俺の飯は!!」と怒るのではなくて、「みんな辛いの嫌がるから作ってなかったけど、一度作ってみたかったんだ」という激辛料理とか、手の込んだ料理等作って楽しんでみてもいい。
家事育児をこなせば、次のステージに待っている介護も、「現実」として想像することが出来るようになる。


確かに失われた30年の間に出産適齢期だった男女は、そのチャンスすら手にすることが出来ない人も多く、複雑な心境になるだろう。
私だってその一人だ。
でも、「自分がつらかったから、次の世代も苦しむべき」って負のループはもう止めていいんじゃないか?てか、止めようよ。

「潔さ」というのも、日本人の大きな美徳だったハズ。
ならば、今こそそれを発揮して、全力で子育て世代、結婚したい世代を応援したっていいじゃないか。
マイナスの30年を、マイナスの50年には、私はしたくないもの。
そう思いませんか?